2018年1月31日水曜日

冬の難題


 先週の大雪から1週間が経ちましたが、まだ所々に雪が残っていますね。
 特に日陰の道路では朝の冷え込みによって凍った場所もみられますので、足元には十分お気を付けください。

 今年度卒業予定の学生は、1年間の集大成として研究発表の準備に追われているところではありますが、それと並行して1000属検定試験のための勉強もおろそかにはできません。



 卒業してからも園芸業界に関わるうえで欠かせない知識として、植物の名前を頭に叩き込んでいます。



 ただこの季節、出題者側の悩みとして、なかなか実物を確保するのが難しいところです。

 ハウス内にある植物ではマンネリが生じるので、道端の草花を含めて出題したいところですが、連日の冬日によって外に植えられた木々の葉はすでに落ちており、草花を見つけようにも雪に埋もれて見えなかったりと状態の良いものが見つかりません。



 立派なメタセコイアは、葉が落ちても樹形で分かりますが…部屋に持って入るわけにもいきませんね。



 実物探しに薬草園に立ち寄ってみると、こちらも雪で覆われ真っ白になっていました。

 ただ、少し雪をかき分けてみると…



 雪の下でも緑の葉が残っていました。
 かまくらのように保温効果があるとはいいますが、凍った雪の下でじっと耐えている姿を見ると、植物の力強さを感じますね。


 学生達、そしてそれを見守る職員も、あと数週間後の発表会に向け、腰を据えて我慢強くじっくりと頑張っていきましょう。

(安藤匡哉)

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2018年1月30日火曜日

カネコ種苗(株)・横浜植木(株) 展示会への参加

 先週の木曜日、東京流通センターとパシフィコ横浜で開催された、カネコ種苗(株)と横浜植木(株)の展示会に、学生さんと共に参加してきました!

 どちらの会場も盛況で、業界関係者が熱心に、植物や園芸資材の見学・買付を行っていました!各種苗会社では、新品種やイチ押しの品種を参加者へ説明していました。

カネコ種苗(株) 高性ペンタス ‘パニックタワー’

東京流通センター{カネコ種苗(株)}にて、ブース展示を行っていた
サントリーフラワーズ(株)のカリブラコア ‘ミリオンベル’の新品種

 また、横浜植木(株)では、昨年度、当研究室を卒業した村岡さんが、ピーマンのブリーダーとして、品種の説明をしてくださいました。
 

村岡さんのセールストークで、野菜が苦手な安藤先生も、試食!

 今回、初参加の学生さんにとっても、非常に良い経験になったようです。今後も、研究だけでなく、見聞を広げながら、自身の将来にプラスにしてもらいたいですね!

黒沼


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2018年1月29日月曜日

100 %でなければいけない!

千葉県柏市はカブの生産量が日本一です。通勤途中に気になって、いつも近所の畑を観察しています。柏市のカブは東京から近いこともあり、漬物の需要から産地が形成されたそうです。同じ畑で年3回収穫されています。

柏市内のカブ畑


この圃場のカブですが、日中の作業を見ることはありませんが、種子を播くとほぼいつも100 % 発芽しているように見えます。相当の腕前の生産者なのか・・・?

家庭菜園でのカブやダイコン、ニンジンなどは、発芽後に間引きを推奨していますが、営利生産の場合は機械で1粒ずつ正確に等間隔に播種し、間引きは行なっていません。やっていたら労力的にとても大変ですね。

種苗会社の開発の方がおっしゃるには、100 % 近く発芽する品種でなければ、生産者は種子を買ってくれないそうです。100 % 出なければいけない! 

味は良くても発芽率が低ければ、なかなか種子は売れないそうです。作業効率を考えればそのような種子が求められて当然かも知れません。また、種子が発芽しなければ、当然その分の収量は減ってしまいますので・・・。

良いことずくめのように思いますが、発芽率が高くなったことから、生産者が間引きをしなくなったため、間引きをしていた時ほど種子が売れなくなってしまったそうです。

花卉・苗生産部でも挿し芽で増殖を行なっているペチュニアのさくらさくらシリーズなどのセル成型苗は、100 % 保証の苗として出荷されています。1枚のセルトレイに200本の苗があれば、200本すべて定植可能な品質の苗であるということです。

セル成型苗の場合は、出荷本数よりやや多めに挿し芽を行ない、発根しない挿し穂があった場合には差し替えを行ないます。差し替えの手間を考えれば、挿したものが100 % 発根し、同じ生長と品質であることが理想です。そのため、採穂の基準や挿し芽の手順などは厳密に決められています。


生育の揃った花卉・苗生産部のペチュニアのセル成型苗(挿し芽)

このように農・園芸分野でも生産性の向上や効率化のために‘完璧’が求められています。一方で、野菜であれば栄養価の減少、花であれば矮化剤の効き過ぎたポット苗など、必ずしも消費者のメリットになっているとは思えないモノが出回っているのも現実です。

誰のため? 何のためのモノづくりなのか? せっかく苗は‘完璧’なのだから、出口までも考慮した‘完璧’さが作り手側に必要ではないでしょうか。


(渡辺 均)
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2018年1月26日金曜日

こつこつとした日常管理

 4年ぶりの大雪が降り、柏の葉キャンパスは銀世界になりました。



 今週の作業は、先週鉢上げしたカリブラコア『ミリオンベル』の3色ミックスの薬散と追肥を行いました。
 母の日に元気な花をお母さん達に届けるために、日常から病害や肥切れの予防はきちんと行わなければいけません。


 まず、薬散です。
 アブラムシをはじめとする害虫を予防するために粒状の殺虫剤をそれぞれの鉢に入れていきます。



 細かい粒剤なので、鉢ごとの散布量を揃えるため、秘密兵器として粒状薬剤供給器「ショットくん」を使いました。





 ショット君のスライドコマを切り替えることで1ショットあたり1g施薬できます。




 農薬が植物体にかからないように、散布した後、手で軽くはらって、鉢表面の土に落とします。
 ショットくんのおかげで、作業は簡単で効率よく散布できました。


 その後、追肥を行いました。
 1鉢に9~12粒を、鉢内に植えた3株それぞれの生育を揃えるため、3箇所に等しく分配します。

 母の日に出荷する前に繰り返し薬散と追肥を行って株を充実させ、お母さんを喜ばせることができるような立派な鉢花になるように、みんなでこつこつ花を育てています。


修士1年:王)

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2018年1月24日水曜日

こんこん


 関東では今季初といっていい大雪となりました。
 雪に足を取られて、普段使わないような力が入り、筋肉痛になりそうですね。


 22日の昼過ぎから、まるで雪国のような景色が広がりました。

 農業は自然の恵みありきで行われるものですが、時折、生産者にとって脅威となることがあります。
 冬の低温や霜、また降雪による影響は、特に露地栽培において植物の生長に大きく関わる要素です。


 温室栽培においても、雪は多大な影響を及ぼします。
 雪の重みで温室が潰れるほか、残った雪が凍る際に、資材が破損することもあります。


 それらへの対策として、こちら苗生産でも温室内の暖房を高めに設定していました。
 もちろんこの時期は植物の維持管理のため、毎晩暖房をかけることは必要となりますが、特に温室の屋根部分に雪が積もってしまうことのないように温度をやや高めの設定にすることで、積もる先から溶かしていきます。
 普段は暖房をつけない温室でも、10℃以上の温度設定で雪をしのぎます。



 通常は温室内の暖房効率を上げるために、内側のカーテンを完全に閉じてしまうのですが、雪対策の場合は温室の天井に温かい空気が行きわたるように少し隙間を開けておきます。
 さらに高めの暖房設定から、植物がいつも以上に乾燥しやすくなる上、水道管の破裂などがあった場合にすぐ灌水できないといった状況も考えられるため、乾きが予想されるものには灌水をしておきます。


 明くる日の朝、家のドアを開けて広がる銀世界に、対策済みとはいえ心配を胸に温室をみてみると…



 端に少し残っていますが、何とか無事持ちこたえてくれたようです。

植物たちも元気な様子です。




 通路確保のため、アタッチメントをつけたフォークリフトを操り、豪快に雪かき無双を行う長嶋さん。
 昼頃には主要な通路にほとんど雪が残っていないくらいほどの大活躍です。


 暖房設備のない場合、温室内でたき火をし、夜の間ずっと火の管理をするといったことも聞いたことがありますが…夜の間頑張ってくれる暖房機に感謝しつつ、減っていく灯油のコストに悩む日々が続きます。

(安藤匡哉)


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2018年1月23日火曜日

イシカワアナイシスさん卒業

 花卉苗生産部では、2017年5月22日~2018年1月16日までの間、JICAの日系研修員イシカワアナイシスさんの受け入れおよび技術指導を行ってきました。
 イシカワさんは、ご実家で切り花や野菜の生産をしており、高度化セル成型苗生産利用システムを用いた高品質な園芸作物生産技術を習得するため、アルゼンチンより、当施設にやってきたのです。
 播種や挿し芽、土づくり、鉢花管理、出荷調整など、何度も何度も同じ作業を繰り返しながら、一生懸命、取り組んで頂けたように思えます。
 帰国の1日前には、JICAにて研修成果を発表!


 報告のなかには、苗生産部で生産を行っているカリブラコアについて、自国の品種特性と日本の品種特性の違いを指摘し、アルゼンチンにおける育種研究に貢献したいという主旨の発表がありました。また、報告の最後には、多くの時間を共に過ごした非常勤職員の皆さんや教職員との写真が掲載され、よい研修であったと感じて頂けたようです。

最後に、JICAの職員の方から、修了証書の贈呈! 

 今、関東は雪が積もっていますが、おそらくアルゼンチンは夏で、カリブラコアも元気に咲いている頃でしょう!
 今回の研修が、少しでも今後に役立つことを、花卉苗生産部一同、願っています。
黒沼

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2018年1月22日月曜日

カランコエの葉挿しのその後

柏の葉キャンパス内の花卉園芸必修1000属検定用温室内でKalanchoe synsepala (Bak.) var. dissecta (Bak.) Rauhの花が咲いています。



本植物は葉の脇からランナーを伸ばし、多肉質の羽裂する切れ込みのある葉も特徴のひとつです。



この植物は、5年ほど前に多肉植物専門店で入手したものです。結構な値段のするものでした・・・。

2年前にランナーによる増殖と植え替えを行ないました。その際、数枚の葉が取れてしまったので、部屋にある鉢に1枚だけ挿しておきました。窓越しの良く日の当たる場所に置き、時々液体肥料を与え、乾かし気味に管理しました。すぐに発根はしたようですが、一向に芽は伸びて来ず・・・。2年が過ぎました!

いつしか葉の切れ込みは無くなり、肉厚の丸々とした葉に肥大してしまいました。4号サイズに輪鉢が小さく見えますね。



十分な環境条件のもと、葉で光合成は行なわれ続けましたが、その光合成産物が生長に利用されることがほとんど無いため、葉に蓄積されたということですね。芽の無い葉と根だけの個体ですが、葉は光の方向に数ヶ月かけて向いていきます。

一年草でも子葉が展開した後に摘芽を行なうと、茎と子葉の肥大が起きることはありますが、その際は、その後に腋芽を伸ばして生長するか、芽が伸びて来なければ数ヶ月で枯死してしまいます。

人間でいえば、貯めてしまったものは消費(分解)させない限りなかなか減りませんが・・・。3年目を迎えたこの葉と根だけの個体は、今後どのような生長を続けるのでしょうね。


(渡辺 均)

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2018年1月19日金曜日

初播き


 こんにちは、学部3年の本田です。
 またしてもオケラ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura)についてのお話になります。


 今回は、先日採種・精製したオケラ種子を播きました!
 2018年の運勢を占う初播きになります。


 こちらがオケラの種子です。



 種子は硬く、表面の細かい毛が特徴的です!

 これをセルトレーに1粒ずつ播いていきました。



 今回は約4300粒播種しました。



 播種後は、覆土・灌水を行い、その後3週間ほど低温処理をかけていきます。




 果たして、どのくらい芽を出してくれるのでしょうか?
 発芽まではあと1か月ほどです。2018年幸先の良いスタートがきれるのか楽しみです。


(学部3年:本田)

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2018年1月17日水曜日

母を想って


 太陽の気分か雲の気まぐれか、上着を脱いでは着たりと忙しない気温変化が続きますね。
 朝夕だけではなく、昼間の服装チョイスにもお気をつけください。



 さて、年も明けてまだ2週間ほどですが、今回の実習では5月の母の日に向けた鉢花の鉢上げをおこないました。
 取り扱う品目は、定番ながら人気の高いカリブラコア ミリオンベルの3色ミックスです。


 去年のうちに納品されたセル苗をポットに上げ、摘心をして芽数を増やした状態から、さらに鉢上げして株を大きくしていきます。
 鉢上げ時に各色1ポットを植えていきますが、今の段階では花が上がっていないため、ポットの色で判別して植えていきます。



 暖色系の3色として、以下のポットカラーがそれぞれの品種に対応しています。
‘チェリーピンク’(オレンジ)
‘プラチナピンク’(ピンク)
‘イエロー’(バイオレット)
 全て黒ポットのものから選ぶよりは格段に見分けがつきやすいですね。


 これら3ポットを1鉢に植えていきますが、生育にばらつきがあると最終的な色のミックスバランスが悪くなってしまうため、生育を揃えるために摘心の回数を変えています。
 中央のプラチナピンクは冬期の生育がやや遅いため、他を2回摘心しているのに対し、1回のみ摘心しています。
 現段階では芽数が他に比べ少ないように見えますが、今後の生長過程において調整することで、各品種のサイズバランスを整えていきます。







 3ポットを1鉢に植える場合、端や中央部分にできる穴にしっかり土詰めしないと、灌水の際にポットの肩部分が出てしまい、乾燥ストレスを受けて生育不良が生じることもあるため、抜かりなく土を詰めておく必要があります。



 ベンチ上にぎっしりと敷き詰められた鉢花たち。

 今はまだ頼りなくも見える小さな株ですが、伸びては切り戻し、伸びては切り戻し…繰り返していくことで、多くの花が何日も続けて咲くのを楽しめる、正にミリオンベルという名にふさわしい鉢花として、皆様の元に届けられるようになることでしょう。


 今後も出荷までの姿を引き続き追っていきます。


安藤匡哉

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2018年1月16日火曜日

栽培・育種学実験その6

 今回の栽培・育種学実験では、「植物組織の顕微鏡観察」というタイトルで、新藤先生ご指導のもと、ペチュニア 'さくらさくら'の花冠の表皮細胞の観察を行いました!
 顕微鏡観察といえば、皆さんも中学校や高校で行ってきたのではないでしょうか?私も中学校の理科の授業と大学2年の基礎実験でやった覚えがありますが、定着するまで取り組むというよりは、体験授業的で、操作の仕方もすっかり忘れてしまっていました。笑

 新藤先生には、顕微鏡・観察法の分類や、正立型顕微鏡の実際の操作について、講義を行って頂いた後、ペチュニアの花冠の観察と専用ソフトを用いた細胞サイズの計測について、実習をして頂きました!

徒手法により、プレパラートの作成を行っている様子。 

 非常に、細かい作業ですが、熟練のノウハウの伝承により、良いプレパラートが作成できているようです。

顕微鏡で観察し、専用ソフトで、
ピント調整をしながら、画像処理を行っている様子。

細胞の形状を確認しながら、細胞の縦・横の長さを計測していきます。部位によってどのような違いが生じるのでしょうか?
 実験時間中に全ての観察が終了しなかったため、学部3年生は、自分たちだけで、もう一度、本日行った工程を繰り返します。是非とも、この機会に技術を習得してほしいですね!

黒沼尊紀




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