朝夕は過ごしやすい気温の日が増え、今週はやや雲が広がりそうな予報です。
風も強くなり、そろそろ台風への対策が本格化してきそうですね。
そんな風に揺られて黄色の小さな花が揺られています。
ミシマサイコは日本各地の山野に自生するセリ科の多年生草本です。
葉は株元にロゼット状に広がる根生葉と、直立して伸びた茎に茎生葉がつき、細長く伸びた茎のために倒れやすく、大きく伸ばすためには支柱が必要です。
そうして50~100cmまで伸びた枝先から、さらに放射状に分岐した花軸の先には、8~10月に小さな5枚の花弁をつけた新たな黄色の花がつきます。
地上部は茎も花も全体的に細々として、ともすれば貧弱な印象を受けますが、根は力強い太さと特有の香りをもち、乾燥させることで柴胡(サイコ)と呼ばれる生薬として用いられます。
こちらはまだ小さめの株を抜いた根。まだまだ細い根ですが…。
成分としてサイコサポニンを含み、解熱、鎮痛、解毒作用から慢性肝炎や腎炎などの抗炎症の漢方治療に用いられます。
様々な処方に用いられ、薬局でみられるドリンクタイプの風邪薬の原材料としても名前が載っています。
名前にある「ミシマ」は、以前の良質な産地である静岡県東部の三島地方に由来し、三島の薬種問屋に持ち込まれる伊豆で採られた柴胡は、品質の良さから江戸時代の旅人が買う習慣があるとされていました
当時は野生のミシマサイコを掘り出して加工していましたが、需要の高まりによって乱獲がつづき、現在は絶滅危惧種に指定されています。
現在は多くはありませんが国内でも栽培、流通が進んでいるため、これから先、さらに栽培品による供給量が増え、野生のミシマサイコの減少にストップがかかってほしいところです。
地上部のひ弱な細い姿からは想像できないパワーを秘めた根をもつミシマサイコ。
自然の姿で野原に広がる姿を失わせないためにも、利用と保全を両立させた管理を行っていきたいですね。
(安藤匡哉)
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