2015年8月31日月曜日

れんこんサミット

早いもので8月も本日で終了し、大学の夏休みもちょうど半分です。

講義のない夏休みは、植物調査、学会、講演会や勉強会などの予定が盛り沢山です、先週の後半は、徳島県で開催された「れんこんサミット」に出席してきました。この集会は、全国のレンコン生産者、レンコンに関わる県や農協職員など120名ほどが集まり、最新の研究成果や栽培に関する問題点について発表する勉強会・意見交換会と現地視察が行なわれました。

レンコンの産地といえば茨城県。全国の生産量の6割、次いで徳島県の順です。その他に千葉県、石川県、愛知県、岡山県、山口県、佐賀県、熊本県などが産地です。東日本は、地下茎の短くて丸い短茎種、西日本は地下茎の長い長茎種が多く栽培され、地域によって栽培されている品種も異なります。全国に少なくても50品種以上の食用品種が栽培されているようです。また、収穫方法も水堀り(水圧をかけて収穫)や手掘りなど地域の土壌によって異なります。

ところで何で私がれんこんサミット(?)かというと、ハス種子についての食品利用や薬用資源としての活用についてのお話をしてきました。ハスは根だけではなく、ほぼ全草が食用、薬用として利用可能です。また、食用品種だけではなく、花を観賞する花品種も数百品種存在します。全国のほとんどの耕作放棄地は休耕田ですから、様々な目的でもっとハスを活用しない手はないということです。

実際にこの集会に参加して、若手後継者が非常に多いこと、法人化されている生産者が多いこと、1生産者あたりの作付面積が広いこと(70haという方も)、新規就農者が増えている地域など、現在の日本の農業が抱えている問題点とはまったく異なる方向性が見えてきます。れんこんは将来性のある品目として捉えられているようです。要は儲かっているということです。

その他に、品目によっては産地間競争に陥りがちですが、行政の栽培技術に関するバックアップや全国レベルでの栽培技術や病害虫などに関する情報の共有化、交流などの取り組みも他の品目には数少ない先進的な事例ではないかと思います。


れんこんの栽培風景。今年は台風の影響で葉が傷み、地下茎が肥大しにくく良いれんこんが少ないそうです。

ハス田の水を抜き、機械で表土削り取る。


特製のクワを使っての手掘り。

収穫されたれんこん。


  (渡辺均)

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2015年8月28日金曜日

霧ヶ峰高原

先日、長野県の霧ケ峰高原に訪問しました。
聞いたことある名前ではないでしょうか?

そうです、某エアコンの名前の由来となった場所です。

ここは八ヶ岳中信高原国定公園の一部であり、数多くの植物が自生しています。
夏には多くの植物が花を咲かせ、観光客も多く訪れます。

さっそく高原を散策していると、なんだか見覚えのある植物が、、、

ヤマトリカブト Aconitum japonicum var. montanum

ユウスゲ(キスゲ) Hemerocallis vesperitina

ツリガネニンジン Adenophora triphylla var. japonica

他にも、キンミズヒキ(Agrimonia pilosa)やダイコンソウ(Geum japomicum)、ウバユリ(Lilium cordatum)などなど。

これらは、柏の葉キャンパスの薬草園にも植えられています。
つまり、漢方薬等に用いられている薬用植物です。

当たり前のことですが、それらは日本各地で自生しています。
昔の人々は周辺の植物を用いて、漢方等を発展させてきました。
身近にあるものとしっかり向かい合い、工夫してきた結果だと思います。

自分自身もそうですが、最近は新しいもの・無いものに目が行きがちだと思います。
そうしたことも大切ですが、灯台下暗しにならないよう、周りをしっかり見つめ直していくことも大切だと思いました。



修士2年 小林

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2015年8月27日木曜日

扇の風に乗って・・・

先週ご紹介したピレスラムの精製
(http://naeseisan2.blogspot.jp/2015/08/blog-post_20.html)、
今日はその後のお話です。


目の細かさが様々なふるいを用い、
大きなゴミを取り除きました。



















ここから更に、小さなゴミを除きます。
でも、種子と同じ大きさのゴミは、なかなか仕分けられません。

そこで登場するのが、技術職員愛用の扇風機!





















扇風機の風に乗せるように、ぱらぱらと落としていきます。

すると、重みのある種子は扇風機の近くに、
軽いゴミは扇風機から離れたところにふわりと着地します。
















近いところと遠いところで分けて集めます。

近いところ

























これだけ見ても分かりにくいかもしれませんが、、、


遠いところ





















近いところの収集物と比べて、かなり粉っぽいです。


種子の大きさは、1mm前後ですので、
近いところのシャーレの中には、
何百、ひょっとすると何千もの種子が集まっています。













(写真右は先の尖ったピンセット)


この精製方法は、風選と呼ばれ
軽い不良な種子やゴミを風で飛ばし、良い種子を選別するために、
様々な器具や機械が開発されてきました。
イネで使われてきた唐箕や箕も同じ原理です。

一度、風選したものを再度かけるとかなり精度が上がります。

精製が終わったら次は播種。
需要の高まる冬の前に苗を作り上げるには、
急いで播種をしなくてはなりません。





この時期は、ピレスラムだけではなく、
秋冬のイベント事や依頼苗、センター祭などのために
ハボタンやパンジーの播種にも追われています。
暑いのに、最近見ているものは冬の苗で、なんだか不思議な心地です。

バテる暇はありません。
夏は、やりたいことが一杯ダ―!!




(池田)





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2015年8月25日火曜日

猛暑を乗りきった? ~シクラメンの夏越し~

大型の台風の影響なのか、関東もすっかり涼しくなりました。これで夏も終わりなのでしょうか・・・。

さて、花卉・苗生産部のシクラメンは、夏越し対策のおかげで猛暑日の続いた夏をなんとか乗り越えた(?)ようです。また今年の猛暑の割には、例年になくこの時点での葉枚数が多くなりました。今のところ順調です!

昨年と何を変えたのかといいますと・・・。





ミスト(細霧)装置を増やし、日中のミストの噴霧の頻度を上げたこと。また、ハウスの両側に送風機を導入し、終日ハウス内の空気を強制的に攪拌していること。さらに、一見矛盾しているようですが、用土を保水性と排水性の高いものに変えたことなどが挙げられます。昨年の経験を踏まえ、少しずつですが改良を加えています。

ここまでは、夏バテをしないしっかりとした株に仕上がりましたが、油断は禁物。126日(土)のシクラメン祭を目標に、涼しくなるこれからがシクラメンにとっての生長・開花のラストスパートです。それに合わせた肥培管理や栽培管理が求められます。とにかく、台風一過で猛暑がぶり返さないことを祈るばかりです。


  (渡辺均)

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2015年8月24日月曜日

小さな働き者

花卉・苗生産部では休日も教職員が交代で植物の管理を行なっていますので、私も月に数回当番が回ってきます。昨日は私が灌水当番でした。薬用植物のハウス内で灌水作業中に植物の間を飛ぶ2.5cmほどの小さな生き物が・・・。飛んでいる画像はさずがに撮れないので、葉にとまるのを待ってから撮影しました。


デジカメのAUTOで撮影するとピントがなかなか合いません!
さらに何度も写して・・・、やっと。


調べてみると、アジアイトトンボ(イトトンボ科・アオモンイトトンボ属 Ischnura asiatica )という小さなイトトンボでした。アジアを代表するような立派な名前ですが、ごく普通にみられるイトトンボの仲間では最小種のようです。

それだけ? と思われるでしょうが、しばらく観察しているとこのトンボが結構小さな虫を捕まえて食べているのです。 花卉・苗生産部のハウスには小さな虫がたくさんいることがバレてしまいそうですが、じつはこのハウスは薬草栽培ハウスなので農薬を散布していません。このイトトンボは植物の間を飛び回り、ついばむように葉や茎にいる小さな虫を捕まえては葉にとまり、また飛んでは捕まえて・・・。かなりの働き者なのです。残念ながらその画像は撮れません。


どうやって締め切ったハウス内まで入ってきたのかは分かりませんが、しばらくは害虫駆除のため活躍をお願いしたいところです。良く見ないと見えないところで、小さなトンボがハウス内で害虫を駆除しているとは、なかなか面白い光景を目にしました。


   (渡辺均)

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2015年8月21日金曜日

薬膳フレンチ

夏の疲れは胃腸にくるというように、食には特に気を付けたい日々が続いております。
そこで今回は、薬膳フレンチのご紹介を致します。

先月末に開催しましたイベントにて、フレンチシェフをお招きし、薬膳の考え方を取り入れたフレンチ料理を振舞って頂きました。

これは、その際振舞って頂いたシーフードマリネです。

 海老、帆立、浅利、スモークサーモン、鯛などの魚介類と、キュウリ、セロリ、サラダ菜、プチトマトなど野菜類も入っています。
 さらにマリネの味の決め手となるドレッシングには、薬用植物のトウキが含まれています。
トウキとはセリ科の植物です。
性は、温性で、味は甘い、辛い味がします。
緊張緩和・発散発汗作用があり、脾、肺に作用します。
ドレッシングにトウキを用いることにより、味と香りが一気にアップしました。

こんな素敵な料理は見ているだけで、beautiful, colorful, romantic....そんな言葉が浮かんできます。


もちろん、ほかの料理も大変おいしく、皆様からご好評をいただきました。

バジルチキン

大棗、朝鮮人参、松の実、生姜などで作ったサムゲタン
 
いつもは食べることのできないめずらしい料理をいただけて、本当に幸せでした。

今回お招きしたシェフは、もともとフレンチ料理の料理人で、現在薬膳の研究をされているそうです。その方がお客さんに丁寧に一つ一つの料理を紹介する姿を見て、その料理に対する熱意に、深く感銘を受けました。好きな料理を中心し、さらに薬用植物を応用して、周りの人々の健康のために、豊かな生活のために、力を尽くされています。
 では、自分は好きな植物を中心に、周りの人々の生活のために、何ができるのでしょうか。

 Wish I can find the answer someday!

学生:任倩玉


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2015年8月20日木曜日

蚊取り線香の香?

今年もやってきました!
苗生産部 夏の風物詩の一つ、
ピレスラム(キク科Tanacetum)の精製!


5月末に露地で咲き誇っていたピレスラム
















花は、カモミールと似ているでしょうか。
















花が枯れた後、6月末に熟した種子を採取し、乾燥させました。






















このままでは播種しても発芽しなかったり、
カビが生えたり、芽が判断しずらかったり、、、
良いことないので、茎や花弁、種皮を除いて精製していきます。


まずは、果実を茎と分離し、目の粗いふるいへ。





















果実をゴリゴリと押しつぶし、種子を出していきます。

















徐々にふるいの目を細かく。
















4種類ものふるいを使い、丁寧に精製したので、
かなり多くの種子が残りました。


でも、花弁や種皮もすり潰され、種子とほぼ同じ大きさに・・・
これでは、ゴミが多すぎて、播種にはまだまだ向きません。


さて、これをどうするか。

来週は更に精製の度合いを増していきますよ~



ちなみにタイトルは、
かつてピレスラムが蚊取り線香の成分に使われていたとのことから。
ピレスラムの和名は除虫菊です。
・・・意外と虫は寄ってきていましたけれど。
(そもそも、蚊取り線香に利用されていたのとは違う種だったようですが)
焚いたら効果があるのでしょうか?




(池田)





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2015年8月18日火曜日

取り木

園芸別科花組と花卉研究室では、刃物を使用した実習として、毎年取り木と接ぎ木を行なっています。他の大学の農場実習では、行われなくなった実習内容です。しかし、植物の栽培に関する知識を得たとしても実際に刃物が使えなくては、園芸の基本的な作業ができるとは行えません。怪我もかなり心配ですが・・・。

ということで、今回は花組で環状剥皮という方法で取り木の実習を行ないました。まずは、接ぎ木用の刃物を使って、手入れ方法と研ぎ方の実習です。


上手く研げていれば、切れ味が違ってきます。そうでなければ、まったく切れません。新聞紙で切れ味の確認をします。切れる音が違います。




ビニールを切り、紐と湿らせた水苔を用意します。




研いだ刃物で環状に切り込みを入れ、表皮を剥がします。すべて取らないと発根せず、癒合して組織が元に戻ってしまいます。



湿らせたミズゴケを均等に剥皮した部分に巻き付け、ビニールで乾燥しないようきつく巻き、上下を紐で固定します。



下から紐を結んだ方が、作業はしやすいです。最後に刃物を洗い、研いで乾いた雑巾で拭いたら終了です。今回は比較的発根しやすい観葉植物を用いました。早いものは1ヶ月ほどで発根します。



昨年の学生が取り木を行なったものは、鋸で枝から切り離し、ビニールを外して鉢に植え付けました。支柱を立て、しばらく日陰で養生すると1ヶ月ほどで新たな鉢植えの完成です。

特技は取り木! 接ぎ木! 今の時代、そんな学生さんは逆に貴重な存在です。


   (渡辺均)

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さくらさくらシリーズの開花検定

 来春向けのさくらさくらシリーズの苗生産がすでに始まっていることは、以前の6月のブログ「培養苗の馴化とポット上げ」でご紹介しました。

http://naeseisan2.blogspot.jp/2015/06/blog-post_9.html

それ以降、防虫ネット内で管理されている原々種母株のウイルスチェックを行ない、ウイルスに感染していないことを確認したら、その株から挿し穂を取り、セルトレイに挿し芽を行ない、さらにポット上げを行ないます。このポット上げされた株を原種母株といいます。


防虫ネット内で管理されている原々種母株


原種母株ではきちんと‘さくらさくら’、‘おゆきちゃん’、‘桃色吐息’の品種としての性質を示しているのか、実際に花を咲かせて開花検定を行ないます。花色や花の形、草姿と安定性を確認します。

さくらさくら’

‘おゆきちゃん’


‘桃色吐息’


どの品種も正常な花色と花形と草姿をしています。開花検定で異常が無いことを確認したら、さらにこの株から挿し芽を行なって増殖母株を作ります。この増殖母株から挿し穂を取り、大量のセル成型苗を生産して行きます。このセル成型苗をそのまま生産者さんへ出荷したり、ポット苗、さらに母の日向けの鉢花へと仕立てられます。


開花中の‘さくらさくら’原種母株


このように、性質が安定していて無病(ウイルスフリー)な苗生産を行なうために、挿し芽で増殖するほとんどの品種では必ず何段階かでチェックができるような生産体系を組むのが一般的です。一つの品種を販売するために、多くの手間と時間をかけて苗が作られているのです。


   (渡辺均)

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