それに合わせて、地面の下で眠っていた芽や、急激に伸び始めた植物たちの姿で薬草園も賑わい始めています。
山でうまいのは…と以前にも紹介しましたが、ツリガネニンジンAdenophora triphylla var. japonicaの株が伸び始め、周辺からも小さな芽が出始めています。
ツリガネニンジンの新芽は「トトキ」という名前で、全国的に春先の山菜として愛されています。
フキノトウのような山菜らしい仄かに感じる苦味はありませんが、癖がなく食べやすい山菜として、お浸しなどに用いられます。
また、ポリフェノールが豊富に含まれることから、生活習慣病の予防に効果があると考えられています。
開花期は夏で、細長く伸びた茎の先に、茎を囲むように輪生したいくつかの小さな鐘形の淡紫色の花を咲かせるから「ツリガネ」。
咳止めや去痰効果を含む生薬として利用される根がオタネニンジンに似ることから「ニンジン」となったようです。
学生時代のサークルで、長野県霧ヶ峰で植物保護のアルバイトをしていましたが、その際にも山で咲いているのをよく見かけました。
その場所は国定公園内だったため、山菜として敷地内に入ってしまう人への注意もしていました。
美味しい山菜を求めて、ダメだと分かっていても手を出してしまうのでしょうか。
…なんだかこう書くとアブナイ物のような気がします。
もちろん薬草園内の葉を持ち帰ることは禁止ですのでご理解を。
その他にも、くるりと巻かれた葉が美しいギボウシHostaも地面から次々と伸び始めています。
こちらもツリガネニンジンと同様に新芽部分を食用として、「ウルイ」という名前で和え物などに用いられます。
写真の下部に見られる赤味がかった箇所を取り除き、塩をふった湯で軽く茹でれば鮮やかな緑色の葉もの野菜のような姿を見せ、独特なヌメリをもった食感が癖になるとも。
以前より道の駅などでよく売られているのを見かけましたが、最近ではスーパーの一角に山菜コーナーができたり、通販で購入することもできるようになったことで、手を出しやすくなったように思います。
一般的な野菜も旬はあれども、周年栽培への努力により、比較的いつでも店に並ぶようになりましたが、今でしか食すことのできない春の山菜をいただくことで、季節を感じる良い機会になるのではないでしょうか。
(安藤匡哉)
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