2018年11月14日水曜日

遺伝子分析の基礎


 さて、すでに何度かご紹介している3年生の実験に関して、今週は「遺伝子分析の基礎」について座学と実験を行いましたので、一部をご紹介します。

 遺伝子というと、最先端の科学技術というイメージがある方も多いかと思いますが、現在では様々な分析方法の一種として、広い学術分野において利用されています。

 特に遺伝子の代名詞ともなっているDNAは地球上のあらゆる生物の中に含まれており、遺伝という言葉から想像される親から子への情報伝達だけでなく、生命現象に関わる様々な機能をもつタンパク質を生み出す情報伝達の最も上流に関与しています。
 そのため、何らかの生命現象の要因を解明する際に、ひとつの指標として用いることができます。



 ただ、ここで気を付けておきたいのは、遺伝子を分析することによって、全ての生命現象が解明できるということはなく、更には、どの遺伝子をどのように調査する必要があるのかを判断するために、見た目で分かるような現象から、順に遡って生じている現象を理解する必要があるということです。


 花色を例にすると、花色の異なる品種の違いを解明するために、それぞれの違いを比較するための指標として、大まかに、目視>色差値(色の数値化)>色素成分>酵素活性>遺伝子発現>塩基配列…といったように、DNAを起点とする生命現象を遡って調査しなければ、花色を決定する因子にたどり着くことは難しいと考えられます。

 

 遺伝子分析は技術発展により生み出された分析方法のひとつではありますが、基本的には様々なアプローチの一種として認識しておかなければ、現象を誤って捉えてしまうこと、あるいは答えにたどり着くことが出来なくなる可能性があることを肝に銘じる必要がありますね。


 他にも生命現象の解明だけでなく、種の識別に利用されることで、形は似ているけど現在の形に至るまでの過程、元となった種が違ったために、遺伝子分析によってこれまでの分類とは全く異なる分類体系が作られ、図鑑の大幅な改訂が起きることもありました。
 また、あらゆる生物、種を問わずに同様のDNAが含まれていることから、様々な種で考案された分析モデルを別の生物種に対して適応するといった汎用性の高さも分析のメリットです。



 今回の実験では、自身の研究植物でもあるダンギクCaryopteris incanaの自生地が異なる系統間においてDNAの塩基配列を比較することを目的に行いました。

 ダンギクは、ペチュニアなどに比べてマイナーで、遺伝子を含めた様々な情報が不足していることに加えて、日当たりの良い露岩地という特殊な環境に自生していることから、他植物との表現型の比較も難しいと考えられます。

 そのため、ある程度統一された分析モデルに組み込める遺伝子分析を行うことにより、表現型との関連も含めて、異なる自生系統の違いをより深く理解することが可能になります。
 今週は座学を多めにとっていた分、植物の葉を粉砕して、DNAを抽出するという操作まで行いました。



 小さなチューブに葉を詰め込み、液体窒素で凍らせて粉砕し、震える手でマイクロピペッターを持ちながら、様々な試薬を加えては分離して取り除き…を繰り返し、最終的にチューブの下に僅かな液体にDNAを溶かした状態で抽出完了です。

 次回は続きとなるPCRという操作からスタートです。
 遺伝子分析の基礎として、なぜ遺伝子を調べるのか、どのようにして調べ、どう利用可能なのかを覚えるきっかけを掴んでもらえたことを期待します。


(安藤匡哉)


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