2018年11月13日火曜日

異なる湿度条件下のトルコギキョウのチップバーンの発生

 2週に渡って、トルコギキョウの話題を。
 先週も申し上げましたが、当研究室では渡邉勇暁さんが、トルコギキョウのチップバーンの発生に関する研究を行ってきました。その成果の一部が、「異なる湿度条件下におけるトルコギキョウのチップバーンの発生とCa分配 {Tipburn severity and Ca distribution in lisianhus (Eustoma grandiflorum (Raf.) Shin.) cultivars under relative air huidity conditions}」というタイトルで、論文(短報)となりましたので、ご紹介します!
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 まず、チップバーンは、一般的にカルシウム(Ca)の欠乏障害と考えられており、局所的にCaが不足することによって、葉先枯れが発生します。そのため、トルコギキョウでは、新葉の葉先のCa量が不足しているということです。
 また、チップバーンなどのCa欠乏症は、湿度環境と密接に関係することが知られています。このことは、Caは窒素などとは異なり、水の移動に強く依存するためです。つまり、「相対湿度を下げて、蒸散速度を上げることによって、Caの移動が促進され、チップバーンの被害度が減少する。」というのが、定説です。
 
 今回は、閉鎖型システム内の環境を、50%(低湿度区)と70%(高湿度区)で、7種のトルコギキョウを栽培しました。

閉鎖型システム内でのチップバーン発生の様子

 では、結果がどうなったかというと…
 高湿度区で、有意にチップバーンの被害度が上昇した品種は2品種のみで、その他の5種は、処理区間に差は確認されませんでした。さらに、高湿度区の方が、Ca濃度が高い!という現象が...
 この結果は、さっきの説明と矛盾します。ですが、実は、トマトやイチゴなどの植物では、夜間の高湿度条件が、水の移動を促進させ(根圧を上昇させ)、Ca濃度が高くなるという結果が得られています。
 このことから推察すると、単に「湿度条件が低ければよい」という話にはならなそうですね!さらに、生産現場では「曇天後の晴天に、葉水をすることでチップバーンの発生を抑制する」という考え方も普及しています...
 
 皆さんそろそろ、「で、どっちがいいの?」とお思いかと思いますが、その答えは残念ながら、まだ分かりません!
 しかし、今回の成果は、今後の研究の大きな土台となっており、湿度条件を変えながら、どうすればチップバーンが減ったり、Caの移動が良くなるのか?を検討する道筋がみえてきました!
 今後は、肥培管理と湿度条件をメインターゲットにして、研究を進めていく予定です。
 乞うご期待!


黒沼



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