2019年6月14日金曜日

花の香りに酔い痴れて 第13回 ゲッカビジン

 こんにちは。学部4年の下重(しもじゅう)です。

 芳香性を持つ花が多く開花する時期になりました。
 5.5号温室ではジャスミンが開花し、薬草園ではクチナシが甘い香りを漂わせています。


 そんな中、千葉大学環境健康フィールド科学センターにて、少し珍しい、芳香性を持つ花を観察することができました。
 その植物の名前は、「ゲッカビジン(月下美人)」です。
 第13回の今回は、ゲッカビジンについてご紹介していきます。


 ゲッカビジン(Epiphyllum oxypetalum)は、サボテン科ゲッカビジン属の常緑性植物です。
 原産地は、メキシコや中米であるとされており、樹木に着生することで生育することができます。

 開花期は初夏~秋にかけてになりますが、株の栄養状態によっては、蕾ができても咲かずに落ちてしまうことがあります。
 また、花が連続的に咲くのではなく、複数の花がほぼ同時にまとまって咲くことが知られています。

 そして、ゲッカビジンの花の最大の特徴は、「一晩しか花が咲かないこと」です。
 葉に形成された花芽から蕾が伸びていき、開花日は夕方から開花し始め、夜に満開になった後、翌日の朝にはしぼんでしまい、再び開くことはありません。
 今回、その貴重なゲッカビジンの開花の撮影に成功しましたので、ご覧ください。

 【529日:観察1日目】


 ゲッカビジンが開花するかもしれないとの知らせを受け、5.5号温室に向かい、観察を開始しました。

 午前中の蕾は、地面に対してほぼ平行でしたが、夕方になると、徐々に蕾が持ち上がり、少し上を向いてきました。
 蕾は、全体的にコーラルピンク色で、まだ蕾の先端は硬そうな印象です。




(午前中の蕾)






(夕方の蕾)


夜の20時頃まで観察を続けましたが、結局この日は開花しませんでした。


530日:観察2日目】


 写真ではわかりにくいのですが、昨日と比較して、
・ 蕾の先端が柔らかくなっている
・ 蕾全体が若干膨らんでいる
・ 蕾の色が白っぽくなっている
という3つの変化を感じることができました。





(午前中の蕾)


 夜になると、さらに蕾は持ち上がってきました。

 しかし、夜の2030分まで観察を続けましたが、この日も開花しませんでした。


531日:観察3日目】

 昼頃に観察しに5.5号温室に向かうと、昨日と比較して、はるかに膨らみ、全体的に白っぽくなった蕾を見ることができました。





(昼頃の写真)


 今夜こそゲッカビジンの開花が見られるのではないかと思い、夜間でも綺麗な写真が撮れるデジタルカメラを用意し、16時頃からゲッカビジンの前でスタンバイし始めました。

16時頃*
 16時頃の蕾を正面から見ると、蕾の先端がほどけてきているのが分かりました。







1730分頃*
 今にも開花しそうな蕾が観察できました。





1830分頃*
 ついにゲッカビジンの花が開き始めました。





19時頃*
 中央の特徴的な雌ずいが見え始め、ゲッカビジンから香りがし始めました。





1930分頃*
 綺麗な写真を撮影するために、温室内でゲッカビジンを移動させました。




 私の手のひらと比較すると、その迫力がお分かりいただけると思います。





20時頃*
 ほぼ満開の状態になりました。




2030分頃*
 ゲッカビジンが満開の状態になったところで、花卉園芸学研究グループ及び花卉苗生産部の教職員や学生に、その香りを嗅いで頂きました。
 「鼻にずんと来る匂い」、「独特な香りがする」、「ユリ(カサブランカ)の香りに似ている」などの感想を頂きました(個人の感想です)





21時頃*
 ゲッカビジンの特徴的な雌ずいと多数の雄ずいが綺麗に観察できました。
 雌ずいは、1本の花柱が先端で18本に分岐しており、多数の柱頭を持つことが分かりました。
 雄ずいは、数えることができませんでしたが、非常に多く存在しておりました。







 また、がくや花弁が反り返っている、美しい横顔も観察することができました。





 この日は、2130分頃まで観察を続けました。


61日:観察4日目】

 昨晩、綺麗な花を咲かせたゲッカビジンは、朝にはすっかりしぼんでしまいました。





(午前中の花)



 観察終了後に、ゲッカビジンの香りについて調査したところ、主な芳香性成分として、ピーマンの香りを構成する「2-イソプロピル-3メトキシピラジン」という非常に強力な芳香性成分、スパイシーなバラの香りを構成する「ゲラニオール」、樹脂の香りを構成する「サリチル酸ベンジル」などが含まれていることが分かりました。
 「ピーマン+バラ+樹脂」と表現しても分かりにくいと思いますので、機会がありましたら、ゲッカビジンの花を観察し、その香りを堪能してみてくださいね。


 これから、梅雨の季節になりますが、植物を観察するにも良い季節です。
皆さんも、身近に溢れている芳香性を持つ植物を観察してみてはいかがでしょうか。


(学部4年:下重)

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