からっと丸1日晴れた日はいつのことだったでしょうか…。
研究室前のテラスの軒下でも、カラスが雨宿りしながら空を眺めていました。
日中30度を超えるような日も過ぎさり、朝晩は肌寒さを感じる季節となりました。
山を鮮やかに彩るオニユリも花が終わり、散ってしまいました。
しかし、どうやら茎は枯れずに、何やら黒っぽい実?のようなものがちらほらと。
こちらは『むかご』と呼ばれる器官です。
むかごと聞くと、山芋のむかごを利用した秋の味覚として頂くことのできる、むかごごはんなどが思い浮かぶでしょうか。
(オニユリのむかごは甲殻類のカメノテに似ているようにも見えますが…)
地上部の葉の付け根、芽が出てくるあたりに鎮座しているむかごは、小さな球根のような役割をもっています。
オニユリは、球根植物の1種で、分球等による一般的な方法でももちろん増殖させることができます。
ただ、むかごを利用することで、それよりもさらに効率よく、そして大量に増殖させることができるのです。
オニユリは、自然状態で4倍体と2倍体が交雑したことによって生まれた3倍体という特性をもっており、花は咲くものの種子を作ることが出来ません。
その代わり、自身と同じ遺伝子をもたせた、むかごを周辺へとばらまくことによって、分布を拡げています。
オニユリのむかごの中を見てみると、一番外側の色付いた鱗片の中に、何枚かの鱗片に包まれた多肉質の芽のようなものがありました。
地面に落っこちた時には、この部分に蓄えた栄養を使って根を張り、芽を出し…生長のプロセスとしては大きめの種子とあまり変わらないですね。
発芽用の土壌としてバーミキュライトをトレイに敷き詰め、その上に採集したむかごを置いて1週間、早くも根を出している個体もみられました。
細かい根毛がびっしり。
こちら最初の勢いは早いのですが、どうやら開花までには2~3年かかる模様。
環境条件を変えたらもっと短く開花させることができるでしょうか。
一風変わった子孫の残し方をする、オニユリのむかご生長記録の第一歩でした。
(安藤匡哉)
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