2019年9月24日火曜日

トルコギキョウのチップバーンの前と後

 先週の予告通り、今回はトルコギキョウの最新の研究成果について、ご紹介します!今回ご紹介する内容は、先日開催された園芸学会で発表済みです{園芸学研究第18巻(2), P167}。
 当研究室では、閉鎖型の苗生産システムを用いて、環境を一定にし、トルコギキョウのチップバーン発生(葉先のCa欠乏)について、研究を進めています。
 同じ環境で実験を繰り返すと、実験の開始から、4~5週目で、チップバーンが発生することが確認できました。では、なぜこのタイミングでチップバーンが出るのでしょうか?仮説としては、以下のことが考えられます。
①チップバーンの発生前後で、体の成長に対し、Caの吸収量が足りないという現象が発生する。
②チップバーンの発生前後で、植物体内のCa分配に大きな変化が生じる。
③チップバーンの発生前後で、①と②が同時に発生する。

 この謎を解明するため、当研究室の木下さん(現 長野県職員)とともに、実験を行ってきました。3品種を毎週サンプリングし、茎や根だけでなく、主茎の葉は、節位毎に分けて分析するなど、木下さんには大変な苦労をかけました...
m(_ _)m
 その結果、②が主な原因であることが判明しました。簡単に申し上げますと、トルコギキョウはチップバーンの発生する品種もしない品種も、実験開始後4~5週目で根へのCa分配が増加し、葉へのCa分配が減少することが明らかになりました。そのCa分配の変化に伴い、新葉の葉先のCa濃度が閾値を下回る品種は、チップバーンを発生してしまう、ということです。
 この知見は、「どうして生育初期はチップバーンは発生しないのに、生育中後期でチップバーンが発生するのか?」に対しての答えを提示したと同時に、より有効な施肥計画の立案に貢献するものと考えています。
 しかし、「どうして根にCaが蓄積し、新葉の葉先にCaが移動しないのか?」「CaやB、Mg、Kなどの培養液の元素組成とチップバーンの発生の関係は?」、「何故4~5週目なのか?」などなど、まだまだ分からないことだらけです!
 今後は、様々な元素を考慮した培養液組成とチップバーン発生の関係を栽培試験で調査していくとともに、CAXをはじめとした遺伝子発現とCa局在性に関する研究も進めていく予定です。また、本成果は、論文にし投稿中ですので、掲載された場合は再度アナウンスさせて頂きます。乞うご期待!

学会発表ポスター


 最後になりましたが、昨日のプログ記事にもありましたように、この度、研究奨励賞を受賞することが出来ました。これもひとえに、学生の時からご指導頂いております渡辺均教授をはじめとした教職員の皆様、共同研究先であります共同カイテック株式会社の皆様、農研機構 東北農業研究センターの皆様、実験に協力頂いた先輩・同輩・後輩の皆さんなどなど、様々な方々のご支援によって、得られたものです。
 略儀では御座いますが、この場を借りて、心より御礼申し上げます。
 ご支援とご協力を有難う御座いました。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。


(黒沼)

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