前回の行先は視察という名の観光地巡りでしたが、この日は日本領事館を訪問しました。
物々しい看板ですね、入口にはガードマンも警備しているほど。
襟を正していざ行かん!…と思ったのですが、領事さんが近くの喫茶店に行きましょうとご提案。
若干肩透かし気味ですが、お洒落なカフェでの仕事というのも海外らしいでしょうか。
訪問の主な目的は、我々派遣団と領事さんの顔合わせだったので、ロシアと日本における薬用植物について雑談を交わし、ゆったりと時間を過ごしました。
ロシア勤めになるまでは日本で仕事されていたそうですが、農業に対する考え方や制度など、様々な面で違いがあることから、よりよい関係や技術その他の交流を進めていく上で、その擦り合わせに力を注がれているようです。
近頃のロシアの注目ワードは「施設園芸」ということで、日本をはじめ世界の国々から技術や知識の収集に努めているとのこと。
もちろん花卉苗生産において生産の土台となるハウス栽培も、施設園芸の1つの形態です。
ただ、どうもロシア人がイメージする施設園芸は、さらにハイテク化された植物工場レベルのものだとか。
確かにロシアの気候を考えると、施設園芸という外部環境をマイルドにしてくれる農業は効果的で魅力的に映るのかもしれません。
しかしながら、ロシアでの施設園芸を用いた効率的な栽培技術の発展や実践的な研究というのは、そこまで進んでいないのが現状のようです。
というのも、ロシアの農業方針として、使える土地が非常に広いことから、そのポテンシャルだけでなんとかなってしまうという考えをもつ人が多く、限られた面積で効率的に生産するという考え方にまだ乏しいということが根底にあるためです。
また、農地の広さだけでなく、世界一大きな国土には貴重な野生植物も数多くポテンシャルを秘めていると思われますが、それらを活用して儲けていくという考えをもつ人もまだ少なく、ごく一般的な品目を生産している農家さんがほとんどです。
新藤特任研究員の研究対象でもあるオタネニンジンも自生しているということで、研究を目的として日本へ持ち帰ることができないかと相談してみましたが、以前のブログでご紹介した通り乱獲により数が減っており、レッドデータブックに掲載されていることから、持ち出しは難しいというお話でした。
そうした理由なら仕方ないかとも思ったのですが、最近ではロシアからの植物資源の持ち出しに関する制限が厳しくなっているらしく、その他の品目についても確認が必要になるようです。
ロシア側としても、そうした自国資源のアドバンテージをしっかり認識しての措置なのでしょうか。
こうした生物資源に関する各国間の輸出入の問題は、研究面での足かせの1つではありますが、国同士の関係性や現場での話し合いを重ねていくことで、お互いに落としどころを見つけ出し、協定を結び自由な研究や活用が可能になっていくと、もっと面白いことへと繋がるかもしれませんね。
そんなことを会話しつつ、カップを傾け、ほっと一息つくのでした。
(安藤匡哉)
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