もう10月に入りましたが、秋というには気温が高めのままですね。
銀杏の実は色付いても、葉はまだまだ青々としています。
夏と冬の間の季節、春と秋は山へ向かえば色とりどりの花や紅葉、美味しい山菜が出迎えてくれる季節ですが、年々短くなっているような気がします。
春先に天ぷらにして食べた山菜のオケラAtractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura も、今の時期は開花期を迎えています。
地面からニョキニョキ出てきたときの柔らかな若芽はどこへやら。
ノコギリのような鋸歯に囲まれた硬い葉の中から、白い花を覗かせています。
小さな葉を放射状につけた枝先に、魚の骨とも形容される苞葉にくるまれた花は、上から見ると全体で大きな花にも見えますね。
このアザミにも似たアフロな花は、近くで見ると小さな花が密集していることが分かります。
さらに、いくつかの株を比較してみると…
まばらに茶色の筒が見られる株と。
全体が白一色しか見られない株に分かれました。
5つに割れた小さな花から伸びる白い花柱はどちらのタイプにもついています。
片方のタイプにしか見られなかったこの茶色の筒は、葯筒と呼ばれ花粉が詰まっている器官です。
この器官の有無によって、オケラは雌しべしか持たない単性花と、雄しべと雌しべの両方を持つ両性花に分かれます。
両性花の花柱の先端、柱頭は葯筒の中を突き抜けるように伸びるため、押し出した花粉を先端に付けています。
この状態で花が散ってしまえば雄花のようにも見えますが、その後に柱頭が2裂して受粉が可能な状態へと移ります。
オケラの大量増殖用に多くの種子を手に入れたいところですが、前述の通り、雌花のみでは花粉がないため種子をつけることが出来ません。
さらに、両性花でも花粉の出る時期と、受粉が可能な時期がややずれていることに加え、同じ株に咲く花同士では受粉することのできない自家不和合性を示します。
これらの特性のため、交配作業では筆をもって両性花や雌花をいったりきたり。
美味しい山菜を夢見て、今日も筆をとる日々です。
(安藤匡哉)
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