2023年10月17日火曜日

芝地の温室効果ガス収支 その④

 最終回となりました今回は「芝の利用時(ゴルフ場や都市公園など)の温室効果ガス収支と、生産から廃棄までの全工程で、芝地は温室効果ガスの吸収源になり得るのか?」をご紹介します。

 前回までは、「刈り芝の廃棄方法によって、温室効果ガスの排出量が大きく違うこと」、「切り芝の生産時には温室効果ガスの吸収に作用すること」が明らかとなりました。では、芝地を利用する際はどうなのでしょうか?本研究では、スタジアム、ゴルフ場、オフィス、都市公園を想定し、芝を生育させることによるCO2固定と維持管理(施肥や灌水、芝刈り時のガソリン使用など)による温室効果ガス排出量をそれぞれ定量・評価しました。さらに、切り芝の製造時の温室効果ガスの吸収量と刈り芝の廃棄時の温室効果ガスの排出量を上乗せしました。

 その結果、芝刈りだけを行う都市公園を想定した場合は、森林と同程度の温室効果ガスの吸収源として、少なくとも25年間は作用することが推測されました。一方で、その他の芝地では、施肥やガソリンの使用量を削減すること、刈り芝をバイオ炭として再活用することによって、温室効果ガスの吸収源として作用する可能性が示されました。ここで注意して頂きたいのは、今回調査した4つの芝地は、ある一つのシミュレーション値であり、全ての都市公園や全てのゴルフ場において、当てはまるものではないということです。あくまでも、本研究ではある代表値から、現状を把握することで、芝地のもつ温室効果ガスの吸収能(ポテンシャル)を評価するとともに、その能力を高めるための方策を検討しました。今回オープンになったデータは、上記の目的に対し、一つの重要な指標となります。(詳細は下部のURLより論文をご確認ください)

 

 カーボンクレジットや炭素税など、気候変動対策が経済価値に置き換わることによって、植物分野全体の関心が高まり、実行力をもった形に変化してきています。このことを産業や業界のアクセルにするためには、緑化や園芸生産の貢献を今後も丁寧に定量化していく必要があります。一方で、経済的側面だけが緑化や植物の評価軸ではありません。この脱炭素のブームに乗って、画一的な緑地が広がるのではなく、2050よりも長期的な視点で、地球環境や人のためになる植物利用を考え続けていく必要があります。

 私個人の仕事の仕方としても、「波にのまれず、この波を乗りこなすことが重要」と考えています。4週に渡り、お付き合い頂き、有難うございました。

 

本記事は、Inclusive greenhouse gas budget assessment in turfs: From turf production to disposal of grass clippings(和訳:芝地における包括的な温室効果ガス収支評価:芝の生産から刈り芝の廃棄まで)というタイトルで、掲載された論文の内容を簡単に纏めたものです。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301479723017073

 


黒沼


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