2023年10月10日火曜日

芝地の温室効果ガス収支 その③

 3回目となりました今回は、「種子などから切り芝をつくる際の温室効果ガス収支は?」をご紹介します。

 芝地を造成する際に良く用いられているのが、下のような切り芝(ロール芝、ソッド)です。これらの切り芝を丁寧に敷き詰め、根付くまで灌水を行うことで、芝地が出来上がります。


 では、この切り芝は、どのように生産されているのでしょうか?今回は、切り芝の生産者さんにヒアリングを行い、種子や種シバ(栄養繁殖)が出荷適期を迎えるまでに固定するCO2量と、化成肥料や農機具の使用、芝刈り残渣(刈り芝)の廃棄時に発生する温室効果ガスをそれぞれ定量し、切り芝生産時の温室効果ガス収支を算出致しました。

 その結果、切り芝の生産圃場は、約-20 t-CO2e/ha/yearの温室効果ガスの削減に貢献していることが明らかとなりました。さらにこの値は、単純比較は出来ませんが、森林や都市林等で報告されているCO2固定効果よりも高いか同程度でした。

 前回もご紹介しましたが、刈り芝の廃棄などの負の側面(環境負荷の発生)を考慮しても、なお温室効果ガスの削減に貢献することが証明されただけでなく、森林と同程度の値を示したいう点が、草本性緑化植物の生産が有する温室効果ガス削減のポテンシャルを示しています。これまで、林業を除く農業は、N2Oをはじめとする温室効果ガスの発生源として、認知されてきていました。しかし、切り芝のように、出荷後20~30年は維持管理される植物においては、むしろ温室効果ガスの吸収源として、評価できることが、本研究で実証されました。

 次回は、芝の利用時(ゴルフ場や都市公園など)の温室効果ガス収支と、生産から廃棄までの全工程で、芝地は温室効果ガスの吸収源になり得るのか?をご紹介します。次回が最終回になる予定です。



本記事は、
Inclusive greenhouse gas budget assessment in turfs: From turf production to disposal of grass clippings(和訳:芝地における包括的な温室効果ガス収支評価:芝の生産から刈り芝の廃棄まで)というタイトルで、掲載された論文の内容を簡単に纏めたものです。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0301479723017073


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