こんにちは。
本格的な冬となり、冷え込んだ日々が続いていますが、1000属ハウスではいくつかのランが開花していました。
デンドロビウム Dendrobium
パフィオペディラム Paphiopedilum
このように、ランは花や姿のおもしろさから人気がありますが、その形態は非常に合理的です。
もともとランは、植物全体の進化の中でも最後に現れた後発組です。
進化の過程で、自生地での合理性を求めた結果、このような変わった形態になったと考えられています。
ラン科にみられる面白い特徴はいくつかあります。
1つめは「着生すること」です。
樹木の枝などに着生し、高い位置で生育することで光合成に必要な光を労せず手に入れています。
自生地の熱帯雨林では多数の植物が茂っているため、地面にはほとんど光が届かず、生育に厳しい環境です。
一方、雨は多いものの、高い所では水を得るのが困難になります。
そのため、ラン科植物は着生するとともに、乾燥に耐えられるように葉や茎などが進化し、貯水性のある構造になっています。
2つめは「ラン菌を利用する能力」です。
必要な栄養をラン菌から得ることで、胚乳を持たない小さな種子でも発芽・生長が可能になりました。
一果実当たり数万個~数10万個という、埃のような種子をばら撒くことができるため、進化のスピードが増し、適した環境にたどり着ける確率も高まりました。
また、ラン菌が根にとり着くことで、樹上という養分の少ない環境でも支障なく生育できるという利点があります。
3つめは「特殊な昆虫を受粉に利用していること」です。
多種の植物が混在し、開花している環境では、虫媒花であっても同種間における花粉の受け渡しが困難になります。
そこで、特定の昆虫をポリネーター(花粉媒介者)に採用し、それ以外の昆虫を受粉に関わらせないよう、受粉の専門家にさせることで、大切な花粉塊を無駄にしない工夫がなされています。
この過程は共進化であるため、花の構造・大きさ・色・香りなどに虫好みの個性から多様性が生まれ、同時に園芸的な観賞価値の拡大にも繋がり、人々を魅了することになりました。
ただ、特定の昆虫だけをポリネーターにすると、その昆虫が絶滅した場合に子孫が残せないという危険性が生じます。
しかし、その心配よりも、花粉が着実に受粉に使われ、無駄にされないことにエネルギーを使っているところをみると、進化の上ではそちらの方が大切なようにも感じます。
ランの形態的特徴はまだまだあります。
ランを観察していると、植物が独自にとげた進化の面白さを感じます。
(修士1年:井上)
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