2014年1月28日火曜日

重イオンビーム育種


先日、理化学研究所(埼玉県和光市)で開催されたシンポジウムに参加させていただきました。
テーマは、「ゲノム新時代の重イオンビーム育種」。

重イオンビーム照射により人為的に突然変異を誘発し、育種に役立てようとするものです。




重イオンってなんでしょう?
原子に電気を帯びたものがイオン。特にヘリウムより重い元素のイオンを「重イオン」と呼びます。


この重イオンを、加速器と呼ばれる特別な装置を用いて加速し、速度と方向が揃ったビームにして植物体や種子に照射すると、DNAの一部が破壊されて、突然変異体が得られることがあります。

こう書くと難しそうな話ですが、昔から人間は「突然変異」を利用して、育種を行ってきました。

例えばペチュニア (Petunia) の青い花は今ではごく当たり前に見ることができますが、野生のペチュニアには元来、青花の種は存在しません。長い育種の歴史の中で、自然に生じた突然変異体を選抜し、育種を続けてきた結果できた品種 (Petunia x hybrida) たちです。ペチュニアの赤花や白花の品種の多くや、八重咲きの品種も突然変異に由来しますし、カーネーション (Dianthus caryophyllus) だって、基になった野生種は一重咲きです。

植物でなくても、飛べなくなったニワトリも突然変異で生じたものですよね。インドネシアの山奥では野生のニワトリ(野鶏)が飛んでいます。鮒からできたという金魚だってきっとそう。

このように、自然界では偶発的に起こる突然変異を、重イオンビームで人為的に、もっと効率的に生じさせれば、育種がもっと早く進むのではないか、ということで重イオンビームによる育種が行われています。
花色や葉色、花型や草型の変異、不稔化など、様々な変異体の獲得が期待できます。
自然界でも起こり得る現象ですから、他の生物の遺伝子を組み込むなどして、配列を人為的に組み換える遺伝子組み換えとは異なります。


実際にすでに多くの品種が実用化されています。
ペチュニアやバーベナ、サクラやダリア。

そうそう。そういえば、このブログにも何度か登場しているサイネリア (Pericallis x hybrida) のこの品種(‘セネッティ ラベンダーバイカラー’)も重イオンビーム照射によって作出された品種です。





元はこんな感じ(↓)の、もっと濃いピンクの株でしたが、重イオンビームを照射することにより、ピンクが淡く、優しい色合いになりました。




育種は交配だけでなく、こういった、いろいろな方法で進められています。

(金谷)


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