花卉・苗生産では、8月に入り、全国各地から生薬原料が届き、作業棟は乾燥を待つ袋詰めの薬草でいっぱいになりました。そんな中、先週、5升のオタネニンジン種子が届きました。
このオタネニンジン種子は、とても高価なもので、1升数万円もするものです。
一般に、オタネニンジンは6年をかけて根を収穫しますが、その栽培期間中に一度だけ種子を採ります。毎年種子を着けると根が太くならず収量が減ってしまうためです。
今回届いたオタネニンジンの種子は、産地で赤熟した果肉を取り除き、洗浄・乾燥されたものです。‘小豆’を赤いダイヤと呼んでいましたが、オタネニンジンの種子は、さながら‘白いダイヤ’といったところでしょうか・・・・・。 ふつう、白いダイヤはウナギの稚魚のシラスでしたっけ?
さっそく、オタネニンジンを実験対象としている修士課程の三宅さんと一緒に芽切り処理を行ないました。彼に秘伝の技(?)を伝授です。
このオタネニンジン種子ですが、現時点では胚が発達していませんので、このまま播いてもまったく発芽しません。「形態的休眠」とも言われています。種子を吸水・殺菌させたのち、数ヶ月間一定の温度に遭遇させ、胚を生長させる必要があります。さらに11月頃からは低温処理を行なって、「生理的休眠」を打破させる必要があります。こうして、いくつもの工程を経て、初めて発芽することができるオタネニンジン種子が出来上がるのです。
今回、芽切り処理は無事終了しましたが、種子が適度な湿度条件下にあるか、常に確認をする必要があります。しばらく目を離せませんね。一般に花や野菜の場合は、袋入りの種子を買ってくれば簡単に苗を得ることができますが、オタネニンジンの場合はそうはいきません。
自分で発芽能力のある種子を作らなくてはなりません。発芽が揃ってくれなければ、揃った良い苗も得られません。三宅さんの修士2年目の実験にも大きく影響してきます。
良い種子を作ること、つまり発芽能力の高い種子を得ること、 そこにはオタネニンジンの生産者の長年培ってきた栽培技術、さらには複雑な種子処理の作業工程、ノウハウの上に成り立っています。このような特殊な技術も学生さんに伝えていく必要があると感じています。
(渡辺 均)
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