2020年1月29日水曜日

「良い」の定義 そのに


 前回の記事に引き続き、薬用機能性植物の試験栽培において収穫したサンプルの比較や分析のお話です。

 品質が「良い」ものとはどんなものかということで、前回は色や香りを調査しましたが、今回は五感ではなかなか感じられない内生成分を調査対象に。
 以前の記事でも紹介がありましたが、薄層クロマトグラフィーという手法を用いて、それぞれの薬用機能性植物に含まれている薬用成分の定性分析を行いました。


 参考とするのは、日本薬局方という国内における医薬品の規格基準書。

 この中に記載されている生薬に関する確認試験法を参考に、各植物の利用部位(地上部・地下部)を粉末に加工して、メタノールなどの有機溶媒を使って成分を抽出します。

 この操作を経て得られた試料を、ガラス板にシリカゲルなどを薄く張った薄層クロマトグラフィーにスポットし、その一端を溶媒に浸すことで、毛細管現象によってスポットした試料が移動します。




 このとき、試料の成分ごとに吸着の強さや溶解度の違いから移動距離が異なることを利用して、どのような成分が含まれているかを確認することができます。

 操作完了直後は、白い板上を移動した試料がうっすら見える程度ですが、紫外線を照射したり、染色液を吹きかけることによって、目的とする成分を目視で確認することができます。


 ということで、先の色味や香りを調査したサンプルから抽出した試料を薄層クロマトグラフィーにより分離し、紫外線を照射して確認すると、




 このような結果が得られました。

 左側2つの強く発光している箇所は、確認試験の比較用として高純度の標準品をスポットしたものです。

 そのため、左側2つの発光している部分と横並びの位置に発光が確認できれば、その試料には標準品と同様の成分が含まれていると考えられます。

 今回調査した試料では、一応全て発光が確認されたことから、成分が含まれていることを確認できましたが、上側の標品に位置する発光の強さにサンプル間でやや違いがみられたことから、含まれる成分量に違いがあるのではないかと考えられました。


 これを発展させた方法として、研究室において花の色素分析に用いる高速クロマトグラフィーなどの実験機器を用いることで、発光の強さを相対的に測るだけでなく、数値化して比較することができるため、より成分の量にスポットを当てることができそうですね。

 日本薬局方においては、確認試験法として薄層クロマトグラフィーを利用して簡易的に成分の有無を確認します。
 成分の量が多ければ多いほど有効かといわれると一概には言い切れませんが、より品質の良いものを定義するのであれば、成分の量をひとつの指標にすることが出来るかもしれません。


(安藤匡哉)

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