2024年12月6日金曜日

模様は収量を上げうるか

私はナス科落葉低木クコ(Lycium chinense)の研究をやらせていただいています。クコは海岸沿いに生息する塩性植物ですので、出身地である神奈川県藤沢市の江の島にも自生しています。

 ここ藤沢市は日本大学の生物資源科学部があり、祖父が花卉園芸学の先生をしていた場所でもあります。私の祖父を虜にした植物の面白さを確かめたくて、この研究室を希望しました。いつの日かの渡辺先生の講演で、タンポポは栽培できて、しかもきちんと栽培すると根がとんでもなく大きくなるというお話を伺ったときの衝撃は今でも覚えています。

 

下の写真をご覧ください。クコのシュートなのですが、葉と茎の付け根が紫色に着色しているのがお分かりいただけるでしょうか。実はこの着色はクコの生存にとって有利になるとされているのですが、なぜだと思いますか?ヒントはこの植物の害虫です。


 答えは擬態です。クコにはトホシクビボソハムシという害虫が多発するのですが、この紫色の葉腋はそのハムシに擬態していると考えられています。このハムシはクコに含まれている毒性アルカロイドを摂食により蓄積し、天敵に対して防御しているとされていて、草食動物はなるべくハムシを避けたいがためにハムシが多く見える着色クコを避ける可能性が指摘されています。また、ハムシが多いことは他の草食昆虫にとって餌資源が少ないことになるほか、一般的に植物は被食により抵抗性や天敵を誘導するので、ハムシの多いクコは色々な意味でまずいクコになります。そのため、ハムシが多く存在しているように見える着色クコは草食昆虫に好まれにくくなるのです。なお成長して木化による防御が発達すると同時にこの模様はなくなります。着色は一年目の若い茎が食べられないための防御と言えそうです。余談ですがトホシクビボソハムシは糞そのものを背負って糞に擬態しています。毒性がある場合は目立つ方向に擬態が進化しやすいため、個人的にはちょっと謎なところでもあります。

 クコの場合は動物に擬態していましたが、シロツメクサやアザミ類のように白い帯や斑が入ることで輪郭を捉えにくくするカモフラージュや、サボテン類やノイバラのように刺が赤くなることで危険であることをアピールする警告色なども視覚による防御として存在します。若いクスノキの茎や葉柄が赤くなる例では昆虫のカモフラージュを妨害して天敵に捕食させやすくさせています。これらの例から言えることは、植物の色や模様は植食者への防御として有用ということです。ひいては作物を食べる害虫・害獣に対する防御としても有用であり、農業生産に有用である可能性があります。カモフラージュ偽葉を取り付ける、葉に害虫の模様を描くなどして食害が減り収量が上がったら、ゆくゆくは低コストで環境負荷の少ない栽培技術になるかもしれません。

(学部3年 小澤)

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