2026年8月18日火曜日

研究成果のご紹介:堤防刈草プロジェクト2

 今週は、なぜ堆肥はCO2固定化技術として認められてこなかったのか?そしてそれをどう打破したのか?について、ご紹介します。
 堆肥と一言でいっても、腐葉土などの植物性のものや、牛糞などの動物性のもの、食料残渣など、原料は多種多様です。こうした様々な原料から堆肥が製造されているわけですが、一つ大きな要素として、その製造過程で温室効果ガスの放出(特にフラックス)が問題視されています。「堆肥は環境に良いかもしれないけど、温室効果ガスが放出されているから、実は温室効果ガスの排出が優勢になるんじゃないの?」というのが一つ目の壁です。
 また、植物性の堆肥・腐葉土のCO2固定期間が比較的短いとされていることが二つ目の壁です。IPCCを含む国際社会では、CO2固定化技術として評価する際に、100年後の未来を想定して評価するのが主なルールです(実は20年と500年という評価軸もありますが…)。「一時的にCO2固定しているは分かるけど、それ国際ルール的に評価できないよ」というのがもう一つの壁となっていました(100年の壁(私が命名))。

 特に、私たちの産業にとっては、「100年の壁」が大きなハードルですが、100年じゃなきゃダメなんて、そんなのおかしい!という想いをもって、戦略を色々と考えました。そこで、なぜ100年基準が採用されているのかを考え(詳細は割愛)、その論旨に合わせて、CO2固定効果も評価すべき!と思い至りました。それらが下の図です。


当該論文より引用 (Kuronuma et al., 2026)

 図の上部は、植物性の原料が最初に固定したCO2量と堆肥が固定しているCO2量の差が、地球への再リリース分になるので(図上部左)、その再リリース分と温室効果ガスの放出量(図上部右)を天秤にかける必要があるよね。という話です。
 図の下部は、100年基準に則るなら、CO2固定効果も100年間に渡る固定効果を定量化し、環境負荷と比較する必要があるよね。という話です。

 実はこうした研究や解釈は、今まで例がなく、論文の査読者からも「従来のLCA法からの斬新な発展」とご評価頂きました。100年後の残存率の予想など、まだまだ改善の余地はありますが、研究のフレームワークをご評価頂いた上で、環境科学分野の一流誌に掲載頂けたことは、本当に励みになります。
 次週は、刈草で実際に作った堆肥とバイオ炭を園芸生産に使用した際の価値について、ご紹介します。



■ニュースリリース
植物性廃棄物を園芸資材に転換した際の脱炭素効果を実証
―カーボンニュートラルな廃棄物処理と園芸生産へ道筋―

■関連論文
From green waste to horticultural resources: A novel approach to quantifying greenhouse gas emission factors for decision-making
(造園廃棄物から園芸資源へ:意思決定のための温室効果ガス排出係数の定量化に向けた新たなアプローチ)
著者:Takanori Kuronuma, Hitoshi Watanabe, Azusa Gomi, Shohei Masuda, Takuya Mito
雑誌名:Journal of Environmental Management
DOI10.1016/j.jenvman.2026.130335 


黒沼

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