千葉大学花卉園芸学研究グループでは、1986年から種子交換プログラム行っています。種子交換プログラムとは、日本国内の自生地から採集した種子をリストにして、世界50か国240の植物園と希望に応じて種子を交換するというものです。このプログラムを活用することで、市場に出回ることのない種を研究用に収集することができます。また、種子交換は遺伝資源の保全にも重要な役割を果たします。
そこで今回のブログは、先日行った種子採取の様子をご紹介します。
今回採取地として選んだのは、千葉県内の山中と海岸です。早朝6:00に出発し車を走らせ丸一日採取を行いました。
種子の探索には、植物体の葉や果実などの形態的特徴から瞬時に種を判断することや、様々な種の自生環境を把握していることなど、植物に関する豊富な知識が必要です。採取した種子は、図鑑などで簡易的な同定を行った後、地図上で採取地点を確認し保管します。採取地点を明らかにすることは遺伝資源の保全の観点から重要であるからです。
また、種子採取の途中に様々な野生植物や生物に出会いました。
湿った法面に点在していたリンドウ科リンドウ属 (Gentiana属) の一種。
他植物種が少ない乾燥した崖の上に自生していたリンドウ科センブリ属 (Swertia 属) の一種。
海岸の波打ち際の岸壁に群生していたツワブキ (Farfugium属) やイソギク (Chrysanthemum
属)。
薄暗い森林内の小さな小川に生息していたカニ。
このように、植物の分布域は自生環境に大きく依存し多種多様であり、それぞれの種の生存戦略を垣間見ることができました。また、去年採取した地点には今年も同様の植物種が自生しており、長い年月を経て固定された植生が存在することを実感しました。これらの自然は、人為的天災的に意図も容易く変容してしまうことを考えると、かけがえの無いものだと強く思います。
結果、50種程の種子を採取することができました。その多くが木本植物の種子です。今後、これらの種子を正確に同定し、果肉を取り除くなどの種子精製を行い、発芽率向上に努めます。毎年行っている種子採取ですが,毎回新しい発見が尽きず、有意義なフィールドワークであると思いました。
修士2年 斎藤
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